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元新聞記者の「世界道中、旅の途中」

元 新聞記者 世界一周旅記録

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【ギリシャ】子どもの金がじゃらじゃら鳴った

旅の記録 読み物、保存版 ギリシャ

 海外に出ると、日本では見かけないような本格的な物乞いを見掛けたり、思わぬ差別の現場に出くわすことが珍しくない。それを目撃することが「海外に行って価値観が変わった体験」とかなんとか、いう人もいる。

 価値観が変わったっていう表現はお客様っぽくて好きじゃないけど、日本では見られないむき出しの現実みたいなものが垣間見られるのも確かで、そういうシーンに出くわせば、なるべく心にとめておこうと思っている。そんな場面をギリシャアテネで一つ。

 

 子どもがいた

 きょうはアテネ滞在3日目、初めての観光の日。

 僕と大学生のA君は、アクロポリス神殿の入場口まで行ったけど、入場料が高いので入場を諦めて「工事中なのに、なんで30ユーロもとるんや」などと適当な文句をぶつくさ言いながら、観光客がたくさん通る石畳の道を歩いていた。

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 子どもがいた。子どもは笛を吹いて、目の前には、お金を入れるプラスチックの容器が置いてあった。

 

 物乞いは珍しくない。インドでは死んでるんかなと思うような小汚いじいさんが昼寝していたり、トルコではシリア難民の看板を持った家族づれもいた。ギリシャは見た限り、数は少ないし、今日明日生き死にを賭けるような切迫した物乞いはいないように思う。

 

金が鳴った

 子どもは、少しみすぼらしい恰好だったけど、物乞いかは分からない。学校で習った笛の練習ついでにこづかい稼ぎしているのか、切実な生活の手段なのか、などとぼーっと考え、通り過ぎようとすると、中国人の観光客が子どもの目の前を通り過ぎた。

 

 そのとき、子どもの目の前にあった容器が勢いよく、「じゃらじゃら」と大きな音を立てて吹き飛んだ。中国人の一人が気づかず、誤って蹴ってしまったのだ。

 大人なら怪訝な顔して「直せ」というような仕草をするかもしれないが、演奏を止めた子どもはどう反応すればいいかわからず、数メートルくらい離れた容器をただ眺めていた。

 

 普通なら謝って終わりだと思う。しかし、あろうことに中国人のおばさんは少し悩んだ仕草の後、立ったまま足で容器を動かし、元に戻そうとした。金が再び、じゃらじゃらと鳴っていた。

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 不思議な気持ち

 わが目を疑うくらい、あまりにも失礼すぎて、びっくりした。おばさんが直している一瞬、僕は怒りというよりも、不思議な気持ちで「中国ってそういう文化があるの?」って思った。

 もしかしたら、中国では失礼なことではないのかもしれない。手よりも足に神が宿っているとかそんな宗教観がある可能性もあるかもしれない。分析的な立場として、傍観者を決めこんだ。

 

 一方・・・

 ここで面白いと思ったのは、一瞬が人の主義主張や価値観を表すってこと。A君はすぐさま子どもと中国人の方に向かって、両者の物語の中に割って入っていった。

 

 おばさんが半分くらい容器を引きずって中途半端な態度で立ち去ろうという、さらに失礼な行動をしようとしている最中、A君は容器をガッと掴んで子どもの前にどんと戻した。

 金がまた、じゃらじゃら鳴った。4、5人いた中国人に「ファッキン、チャイニーズ!!!」と罵倒した。中国人のおっさんが睨み付けていた。

 

海外はこういうのがあるから面白い

 中国でも、おばさんのとった行動は差別や失礼な行為なんだとおそらく思う。でも、もしかしたら中国では普通の行為かもしれないし、中国人のおっさんが飛びかかって新しい喧嘩の火種をまく結果になったかもしれない。僕は他人事すぎたし、A君は直情的すぎた。

 

 次元も話も違うけど、僕たちは昨日、ピュリツアー賞を受賞した「ハゲワシと少女」の話をしていた。ハゲワシに狙われた飢えた少女を、写真を撮る前に助けるか、先に写真を撮るのか、っていう比較でよく引き合いに出される話だ。

 彼はこの話を聞き、「なんで写真撮ってるんや、まず助けろや」と反射的に突っ込んでいた。

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 海外にいるとこういう場面があるから面白い。現場にいたらどうする?

 その場唯一の傍観者として思ったのでご紹介。

 

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