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元 新聞記者 世界一周旅記録

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【チェルノブイリツアー】予習編・キエフの博物館と日帰り現地ツアー申し込み

 

 福島第一原発事故が発生した5年半前は大学生だった。当時は「おお、すごいこと起こったな」くらいなもんで、放射能もミリシーベルトといわれても全然ぴんと来なかった。たぶんほとんどの人がそうだったんじゃないかと思う。チェルノブイリ原発事故ツアーがあるというので、これを機会に原因や被害の様子を少し勉強して考えてみよう。

             

  ベラルーシの作家スベトラーナ・アレクシエービッチが2015年にノーベル文学賞を受賞したとき、チェルノブイリの祈り――未来の物語 (岩波現代文庫)を読んだ。冒頭の消火に当たった消防隊員の妻の話は、ぞっとするようなリアルな描写とともに深い悲しみが伝わってくる。そのころから世界を旅する機会があれば、チェルノブイリ原発ツアーには参加したいと思っていた。

 

 3分で猿でもわかるチェルノブイリ原発事故

 チェルノブイリの名前を聞いたことがあっても、場所すらわからない人も多いのでは。まずツアーを前に調べてみたので、勉強を兼ねてまとめてみた。

       

  事故の概要は

 1986年4月26日未明、ソビエト連邦(現在のウクライナ)にあるチェルノブイリ原発4号炉で起きた。ソ連が独自に設計開発したタイプで、4号炉は外部電源喪失の事態を想定した実験中だった。現場では運転員、消防隊員30人以上が死亡し、周辺には放射能が広がり、ウクライナの北に接するベラルーシなど広範囲に渡って被害が出た。専門機関の事故評価は最高で他に例がない「レベル7」だった。

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=東欧のウクライナはロシア、ベラルーシルーマニアなどと面する

 

  事故の原因は

 停電などで外部電源が喪失した際でも、しばらくの間は原子炉の蒸気タービンの慣性だけで電力をまかなえるか確認する特殊な実験をしていた。まず現場の操作ミスがあり、異常な状態にも関わらず責任者は実験を中止せず続けた。制御棒の構造欠陥や放射性物質を外に出さないようにする安全対策が不十分で、被害はより拡大した。 

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=事故は午前1時23分に起こった

 

  現在は

 当時避難した30㌔圏内の住民は移住したままで、一部の例外を除き誰も住んでいない。4号炉のほか3基は2000年までにすべて閉鎖され、4号機は石と鉄でつくった「石棺」で覆われているが、老朽化して耐久性などの問題がある。今後100年耐えうるといわれる新型シェルターが2017年から使用される。子どもの甲状腺がんが増えたデータがあるが、白血病など健康被害のはっきりした数字や理由は、研究者によって分かれていて分かっていない。

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=石棺に覆われた4号機。横で新型シェルターの建設が進む

 

 チェルノブイリとフクシマ

 チェルノブイリは10日間で福島第一原発の約6倍の放射性物質を放出した。ともにほかに例のないレベル7の評価だが、東電ホームページには放出された放射能チェルノブイリで520万テラベクレル、福島第一原発で63万~77万テラベクレル。福島では避難や食品制限が適切に行われたなどと書かれている。チェルノブイリ級といわれるのが心外ということらしい。

 東電のホームページやインターネットで見られる論文とかで調べたけど、原因も影響もものによって違ったので、結局のところ見解が分かれており、全容は分かっていないのかもしれない。                   

 チェルノブイリ博物館と日本

 ウクライナの首都・キエフにあるチェルノブイリ博物館で予習してきた。博物館前には当時除染や消火で使われた車両が並ぶ。

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 まず受付で日本語の音声案内を受け取る。最初にあるのが、意外なことに動物のはく製の展示だ。事故から30年がたち、立ち入り禁止区域は、動植物の宝庫になっている。動物にとっては、放射能よりも人間のほうが害悪だと思い知らされる。

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 当時消火活動に当たった消防隊員の様子を伝えるものや、原発事故の処理作業に従事した「リクビダートル」といわれる人について多く展示されていた。リクビダートルは60~80万人いるとされるが、放射能に健康上の影響を受けた人の人数ははっきりわかっていない。放射能がヨーロッパ全土に広がるデジタル地図など被害が広範囲だったことがビジュアルでわかりやすかった。

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  チェルノブイリとフクシマ、ヒロシマナガサキ

 2発の原爆をぶち込まれ、原発事故を経験した日本の展示は当然多い。広島の原爆を報じた広島新聞が常設展示されていた。写真の迫力。福島第一原発事故が1コーナーを割いて紹介されていた。中心には桜と人形があった。旅の中でも外国人が東京、大阪の次に知っているのは福島、広島、長崎だ。

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 チェルノブイリ日帰りツアー申込方法

 ツアーは現地の旅行会社の「SoloEast Travel」http://www.tourkiev.com/を利用した。いくつかの英語のサイトを見たけど、会社の地図が掲載されているのと(行き違いがあったら嫌なので直接申し込みをしたかった)、日ごとの値段が明記してあったため、ここを選んだ。親切だった。

 8月では95ドルが最安で155ドルが最高だった。僕は109ドルの日を選び、保険に10ドル、ガイガーカウンター貸出しに10ドル掛かった。広場に朝8時集合で、午後6時半に解散となる。

 ちなみにほかの旅行会社を申し込んだ人に聞くと、同じ日で160ドルだったので、時期や申込み人数によって95~160ドルだと思う。

 ツアーがよかったらブログで紹介するよと適当なことを言ったら、9ドル割り引いてくれた。

 次はチェルノブイリツアー参加編。

 

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