元新聞記者の「世界道中、旅の途中」

元 新聞記者 世界一周旅記録

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【イスラエル】ユダヤ教「超正統派」はグローバル社会に流されず、無職でシルクハット!!!!

 

 「神は何人だ?」と黒づくめでシルクハットをかぶったおっさんに腕をつかまれ、怖くて思わず逃げそうになった。お決まりのイカれたじいさんか。

 

 ここは3宗教の聖地エルサレム

 一応、僕は「いっぱいおる」って適当に答えた。おっさんは不満そうに僕の腕を離し「お前の指は何本ある?」と尋ねた。10本だ、と答えると次は、お前は何人だ?と。「一人だ」と答えると、おっさんは満足そうに言った。「神も一人だよ」。

 日本にいて「神は何人?」って聞かれる機会ってあるだろうか。どこかのお寺?教会?万が一あるとしても、道を歩いていて知らない人から聞かれることはまずない。しつこかったら警察に通報するレベルだ。

 ここはイスラエルの中心都市・エルサレム。イエスキリストが十字架に磔にされた地(ゴルゴダ)を覆った「聖墳墓教会」やそれに至る道「ヴィア・ドロローサ」があり、イスラム教徒は岩のドームなどを含む「ハラム・アッシャリフ」をあがめる。ユダヤ教にとってかつて古代イスラエル王国の城の残滓である嘆きの壁がある。そう、ここは3つの宗教聖地。   嘆きの壁↓↓

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シルクハットに黒服、長いもみあげ、小刻みに揺れる男たち

 おっさんに話しかけられたのは嘆きの壁。男性はおっさんと同じ姿のシルクハットをかぶり、全身黒スーツがうじゃうじゃいる。もみあげだけ長く、くるんと巻いている者もいる。一見すると、映画の世界に出てきそうで、とてもかっこいい。

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 彼らは壁に向かって、頭を小刻みに揺らしながら、聖書を手になにやら唱えている。僕は、基本全然気にせず誰にでも話しかけていこうと思ってるけど、超正統派は超話しかけづらい。厳しすぎて何が宗教の掟なのか、わからず怒られてしまいそうで。勇気を出して、話しかけても、そっけなくふるまわれがち。カメラもたいてい断られてしまう。世俗との付き合いを最小限にとどめいているそう。

 彼らはユダヤ教の中でも最も保守的な超正統派。超右派集団。ウルトラオーソドックス。ハレーディー、複数形でハレーディームと呼ばれる。調べてみると、彼らの暮らしは「超」がつく呼び名に違わず、とてつもない価値観や暮らしをしている。

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 超正統派は建国を支持せず

 一つ例を挙げると、ユダヤ人国家として建国されたイスラエルだが、超正統派はイスラエル建国を支持する立場でなかったということ。単純に考えると、ユダヤ教を最も規律厳しく守る彼らにとって、かつて古代イスラエル帝国が栄えた聖地で、自分たちの国家の建設は飛び上がるうれしいのではないか、と思ってしまう。

 なぜ彼らは支持していないか。厳密なユダヤ教の教義に照らせば「神による救済を待望する」のが本来であり、「自力救済」は、ユダヤ教の教えに逸脱しているというのだ。超保守的である。

 さらにさらに、ユダヤ教の安息日である金曜日。電話をしない、労働をしない、電気器具は使わない、などと厳密な掟があり、彼らはそれに従っている。ユダヤ教に基づいた生活を徹底している。

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  メアシュリーム 無職の子連れ多し

 ジャングル奥地のどっかの民族ですら文明の暮らしをしている時代だ。今の時代にこんな人たちが存在するなんて。超正統派興味深し。エルサレムから歩いて約20分掛け、正統派住むメアシュリームに行ってみた。当然ながら、男性は全員先ほど紹介した姿、女性は頭にスカーフを巻き、長いスカートをはいている。中世にタイムスリップした気持ちになる。

   目立つのは、ベビーカーを押した親子連れ。本当に多い。アパートの玄関にはほとんどといっていいほど、ベビーカーがある。それにしても平日の昼間に、かなりの人が所在なさげにぶらぶらし、路上でだべっている。

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 肩身の狭い超正統派

 そう、彼らのほとんどは仕事を持たない無職だ。いや、正確には彼らの仕事は聖書を読むこと。ユダヤ教の教えを極めることが仕事なのだ。

 子だくさんの超正統派は人口が思ったより多い。イスラエル人口の8パーセントを占め、エルサレムではなんと約30パーセントだ。そういった背景もあり、政治的影響力を持っているので、男女とも兵役が課せられている同国において、彼らは免除されている。多産家族に支給される児童年金も自然と受け取る割合が増える。

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 イスラエルで特権的な立場にあるが、もちろん一般の人は不満に思っている。兵役も数年後には義務付けられ、肩身の狭い思いをしている。

 いろんな国を巡ると、みんなスマートフォンをいじり、どこにいても、同じ着信音が聞こえる。街並みは違うけど、たいていはマクドナルドがあるし、ケンタッキーフライドチキンがある。観光地は海外から期待されているだろうその国のイメージを必死に守っているけど、その外に出ると、その国独自の服を着ている人は少なく、その国の生活を送っている人は減っている。インドでもミャンマーでも伝統的な服装の腰巻は減り、Tシャツにジーパン。原始的な暮らしの見学のため先住民族の村に行ってもアイフォーンを持っていたりして、少し残念な気持ちになる時代。

 

 ちゃんとミーハーな奴もいた

 そんな時代にあって、超正統派は、自分の生活をなるべく変えないよう、現代と距離を置くようにして生活している。いろんな誘惑があると思う。子どもはうらやましいと思う。でも、おれらはおれらの考えを貫くんだぜっていうのはかっこいい、と僕は思ったのだった。

 メアシューリームから帰る道すがら、変な奴が声掛けてきた。最初は超正統派じゃないと思っていたけど、超正統派らしい。「おい、写真撮ってくれ」って。堅苦しい気持ちでいたので、ほっとした気持ちになった。もちろん超正統派の中にもミーハーな奴もいる。イエー。

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